今日、子供(?)の遊びから国家安全保障に至るまで、ありとあらゆる局面において、 我々の生活はコンピュ−タシステムに依存している。 家庭生活、娯楽施設、運輸.交通、情報通信ネットワーク、産業活動、金融・保険業務、 医療、芸術文化活動、商業活動、農業管理、 行政機能など、我々の日常生活はいつのまにか コンピュータがなければ成り立たなくなっており、しかも、そのことに気が付きにくくなってきている。
そうした状況で、最も重要なものはコンピュ−タの信頼性である。 高度情報化社会が全面的に依存するコンピュータシステムに万一の障害が発生した場合、 多くの人命が失われたり、莫大な経済的損失を招く可能性がある。場合によっては戦争の危険すらある。
すでに、その兆候は現れており、コンピュータの障害が原因と思われる事故が、最近、 しばしばマスコミを賑わす。民間航空機の制御コンピュータ障害による航路逸脱、 航空管制システムのダウンによる空港離着陸の大混乱、電子交換機の障害による大都市全域の電話不通、 銀行オンラインシステムの障害による全国的な自動現金支払い機の停止、 証券取引所の決済システムダウンによる株式売買停止、座席予約システムダウンによる発券停止、 ロボット暴走による人身事故など、枚挙にいとまがない。
コンピュータシステムを構成する部品(ソフトウェア、ハードウェア)にいつか故障(フォールト)が生じるのは 避けられない。しかし、部品が故障したとしてもコンピュータシステム全体としては障害を引き起こさず、 正常なサービスを提供し続けるならば、我々は安心して日常生活をコンピュータシステムに依存させることが できる。部品にフォールトが発生してもシステムは正常に働く性質を「フォールトトレランス」という。
この研究は、我々が健康で快適な生活を営むために、高度情報化社会の基盤として安心して依存できる 高品質計算システム/ネットワークの実現を目指している。
具体的には、論理レベルから物理レベルまで多様なシステム階層を統合するフォールトトレランス技術の 確立、非同期事象駆動原理による並列分散計算システムの建設、並びにソフトウェア/ハードウェア設計を 総合するVLSIシステム設計方法論の開発を通じて、安全で信頼のおける省エネ型の超高速計算システムの開発を行う。